【矛盾対決】カウンター vs ポゼッション

戦術

久しぶりの戦術解説回。
前半戦は、強力なFWを前面に押し出した、カウンターサッカーで神戸が躍進。
一方のガンバも、ボールを支配するポゼッションサッカーで、強さを取り戻しつつある。
そこで今回は、サッカーの2大戦術、ポゼッションとカウンターについて取り上げていく。

戦術の特徴

それぞれの戦術の特徴、メリットとデメリット
相性の良いフォーメーションや、戦術について解説していく。

カウンター

内容

カウンターは、まず自陣でしっかり守備ブロックを組み、相手の攻撃を受け止める。
ボールを奪うと素早く前線に展開し、手数をかけずに一気に相手ゴール前に迫る。
守備重視の戦術で、リスクが少なく、戦力的に劣るチームが採用することが多い。
また前線に強力なFWがいると、破壊力が倍増する。

メリットとデメリット

カウンターのメリットとデメリットは、以下の通り。

【メリット】

  • 戦術がシンプルなので、落とし込みに時間がかからない。
  • 高い技術や、戦術理解のある選手を、必要としない。
  • 前線に強力なFWがいれば、選手層が薄くても何とかなる。
  • 守備重視のため、失点のリスクが少ない。
  • 先行逃げ切りの、必勝パターンが作りやすい。

【デメリット】

  • 高い運動量とフィジカルが必要。
  • 攻撃が、FWの個人能力に依存してしまう。
  • 相手が出てこないと、始まらない。主導権を握れない。
  • 先行されて守備を固められると、逆転が難しい。

手軽にできるが、スーパーなFWがいないと、点が取れない。
守備の時間が長く、単調なサッカになりがち。

フォーメーション

カウンター戦術と相性の良いフォーメーションは、以下が挙げられる。

  • 「4-4-2」
  • 3バック全般

カウンターは、まず守備から入るため、守備重視のシステムと相性が良い。
守備が最も安定するのは、3ラインがきれいに並ぶ、「4-4-2」。
選手間の距離が良く、スペースを埋めやすい、最強の守備戦術。
またボールを奪うと、2トップが前線に待ち構えており
MFの上りを待つ必要がなく、攻撃を完結できる。

また、3バックも、両WBを下げた5バックの状態で、ゴール前を固められるため
カウンターサッカーと相性が良い。

戦術

カウンターには、大きく以下の2種類がある。

  • リトリート → ロングカウンター
  • ハイプレス → ショートカウンター

リトリートとは、低い位置で守備ブロックを作り、ゴール前に人数をかける守備戦術。
相手を自陣に引き込んで守るため、相手DFの背後に広大なスペースが生まれ
ボールを奪ったら、一気にスペースめがけてロングボールを供給する。
これをロングカウンターといい、一般的なカウンター戦術となる。

一方ハイプレスは、相手GKやDFラインめがけて、激しくプレスをかけ
高い位置でボールを奪って、最短距離でゴールを目指す戦術。
効率は良いが、プレスを剥がされると、一気に自陣に攻め込まれるリスクがある。
また膨大な運動量を要求されるため、90分通してハイプレスを
かけ続けることは不可能で、行く行かないの判断が重要。
行くときには、前線だけでなく、中盤も連動してプレスをかける必要があり
選手の共通理解が必要となる。
ロングカウンターに比べ、難易度は高い。

ポゼッション

内容

ポゼッションサッカーは、「ボールを握る」ともいうように
出来るだけマイボールの時間を長くし、試合の主導権を握るスタイルのこと。
ショートパスを繋ぎながら、スペースを見つけて前進していく攻撃方法で
一般的には「パスサッカー」と呼ばれる。

メリットとデメリット

ポゼッションのメリットとデメリットは、以下の通り。

【メリット】

  • ボールを保持するので、ゲームの主導権が取れる。
  • ボールを持っている限り攻められないので、失点のリスクが減る。
  • 攻撃のバリエーションが多く、得点パターンが多彩。
  • チームの約束事が決まっており、特定の選手に依存することが無い。

【デメリット】

  • 選手が連動して動く必要があり、戦術の浸透に時間がかかる。
  • 足元の技術や、戦術理解力など、高い能力を持つ選手が必要。
  • パスを繋ぐことが目的化すると、「ボールを持たされている」状態になる。

戦術が浸透すれば、華麗なパスサッカーで圧倒できるが
習得に時間がかかり、レベルの高い選手が各ポジションに必要。

フォーメーション

ポゼッションサッカーと相性の良いフォーメーションは、以下が挙げられる。

  • 「4-1-2-3(4-3-3)」
  • 「4-2-3-1」

ボランチが、1ボランチ(アンカー)かWボランチかの違いで
MFを中央に3枚、両翼にWGを配置したシステム。
中央とサイドに選手がバランス良く配置されており、選手間の距離が良く
斜めのパスコースが多いため、ポゼッションに向く。

戦術

ポゼッションサッカーで使われる戦術には、以下のようなものがある。

  • サリーダ・ラボルピアーナ(ボランチ落ち)
  • 偽SB
  • カウンタープレス(即時奪回)

ボランチ落ちや、偽SBは、相手のハイプレスに対して、ビルドアップを円滑にする戦術。
本来のポジションからずれることで、スペースとパスコースを生み出し
ビルドアップの出口を作り出す。

カウンタープレスは、相手にボールを奪われたら、すぐに味方の選手で相手を囲み
即時にボールを奪い返す戦術。
これにより再びボールを保持することで、ポゼッションが継続できる。

Jリーグでの状況

第21節終了時点での、各クラブのボール保持率は、以下の通り。

チームボール保持率順位攻撃回数得点
1川崎56.6%7112.3(17位)27(8位)
2新潟55.1%14116.3(15位)22(15位)
3横浜FM54.8%2117.9(11位)44(1位)
4G大阪53.5%13116.5(13位)27(8位)
5浦和53.3%4110.3(18位)27(8位)
6札幌53.1%11125.3(3位)41(3位)
7広島50.5%8130.3(1位)24(13位)
8湘南50.0%18126.1(2位)26(11位)
9鳥栖49.7%9116.1(16位)29(6位)
10C大阪49.4%5121.1(5位)30(4位)
11神戸48.8%1119.3(8位)42(2位)
12FC東京48.6%12123.0(4位)26(11位)
13横浜FC47.2%16119.6(7位)15(18位)
14鹿島47.0%6119.3(8位)28(7位)
15京都46.8%15119.2(10位)24(13位)
1645.9%17116.8(12位)18(17位)
17福岡44.1%10116.5(13位)21(16位)
18名古屋43.2%3120.9(6位)30(4位)
出典:J STATs
  • ボール保持率と、順位に、相関関係は無い。
    ボールを支配したからと言って、勝てるわけでは無い。
  • ポゼッションが50%超のチームは、7チームだけ。
    2023年は、カウンター型が多数派。
  • カウンター型は、縦に速く攻めるため、攻撃の回数は多い。
  • ポゼッション型は、攻撃に手数がかかり、回数は少ないが、得点は取れている。
    ポゼッション型の方が、攻撃の効率は良い。

まとめ

カウンターとポゼッション、どちらが優れているとは言えないが
「カウンター=現実的」、「ポゼッション=理想的」というのが
一番しっくりくるだろう。

今年のJリーグは、カウンター型の現実的なサッカーを選択するチームが多い。
神戸、名古屋は、強力FWを前面に押し出し、理想のカウンタサッカーを展開。
また、鹿島、横浜FC、FC東京のように、ポゼッションでうまくいかなくても
より現実的なカウンターに切り替えて、立て直しに成功するチームが目立つ。
去年までのガンバも、まさにこのパターン。

ただ個人的に、やっぱりカウンターはつまらない。
特に去年までのガンバは、まさに「弱者のサッカー」。
ひたすら守備ばかり見せられると、疲れるし、楽しくない。

その点、今年のガンバは、素晴らしい戦いをしている。
序盤は、やはり戦術の浸透に苦労して、1勝4分9敗と散々。
最後は5連敗もあり、ポヤトス解任寸前まで堕ちたが
ここで我慢できたのが大きかった。

ジェバリが復調し、前線に起点が作れるようになり
山本悠樹の覚醒で、中盤3枚が安定。
WGの動き方も整理され、CBも福岡が台頭。
ポヤトスの戦術が浸透し、15節以降は、6勝1分と絶好調。

この戦い方で行けば間違いない、という方向性がはっきりしたのが一番の収穫。
観ていて楽しいサッカーで、チームが躍進するのは
サポーターにとっても至福の瞬間。

またタイトル争いのステージに戻れるか。
黄金期の到来を楽しみに、再開後のガンバを見守っていきたい。

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