【戦術解説】ポジション編 第2回「MF」

戦術

戦術解説のコーナー。今回も「ポジション」編の続き。

第2回は「MF」。

MFの役割

MFはフィールドの中央に位置し、攻撃と守備の両局面で様々な役割が求められるポジション。攻撃的なポジションと守備的なポジション、両方が求められるポジションがあるうえに、フォーメーションごとに固有のポジションがあったりもして、とにかくポジションの種類が多い。

背番号は一般的に、6番がアンカー、7番がサイドのドリブラー、8番がボランチ、10番がトップ下の選手がつけることが多い。

MFに分類されるポジションとして、ここでは以下の6つに大別した。

  1. トップ下
  2. インサイドハーフ
  3. サイドハーフ
  4. ウイングバック
  5. ボランチ
  6. アンカー

ではそれぞれのポジションの役割、プレースタイルについてみていく。

トップ下(OMF)

トップ下の役割と特徴

トップ下は、主に「4-3-1-2」や「3-4-1-2」などのフォーメーションで、FWの後方「1.5列目」の攻撃の起点となるポジション。

バイタルエリア(MFラインとDFラインの間)でボールを受け、FWへのラストパスや、自らドリブルで切り込んでゴールを狙うのが主な役割。

相手ディフェンスの厳しいマークを受けながら決定的な仕事ができる、テクニカルな選手が多く活躍する。

プレースタイル

ピッチの王様、10番、司令塔、ファンタジスタ。

バイタルエリアでポジションチェンジを繰り返しながら、相手DFの隙を見逃さず決定的なラストパスを通す。

守備負担は他のMFに比べると軽いが、その代わり攻撃で決定的な仕事が求められる。

代表的な選手

万博の「ファンタジフタ」、二川 孝広

超絶トラップから瞬時に繰り出す絶妙のスルーパスで、アシストを量産。フタがいればいくらでも点が取れる、と歴代ブラジリアンFWから愛された。在籍18シーズンは歴代2位、03年から14シーズンにわたり「ガンバの10番」を背負った。

インサイドハーフ(IH)

インサイドハーフの役割と特徴

インサイドハーフは、主に「4-1-2-3」や「3-2-2-3」などの3トップのフォーメーションで、FWの後ろに位置する攻撃的な2枚のMFを指す。サイドはウイングが担当するため、主にハーフスペース(CBとSBの間)にポジションを取る。

攻撃では、相手DFとボランチのライン間でボールを受けてFWにパスを供給したり、2列目から前線に飛び出してゴールを狙うのが主な役割。

一方守備でも、FWと連動して相手CBやボランチにプレスをかけたり、ラインを突破されたときはプレスバックしてボランチと挟み込んでボールを奪うなど、役割は多岐にわたる。

プレースタイル

攻撃の起点となるチャンスメーカー。

ハーフスペースを主戦場とし、パスやシュートの技術が高いテクニカルな選手が多い。またWGとのポジションチェンジを繰り返し、相手に守備の的を絞らせない、戦術理解力の高さも求められる。

代表的な選手

縦横無尽のNo.10、倉田 秋

テクニックと運動量を併せ持つ攻撃的MF。攻撃では積極的に前線に飛び出しシュートを狙うと同時に、守備でも献身的に動き、背中でチームを引っ張るチームリーダー。2023シーズンも「ガンバの10番」を背負い、ピッチを縦横無尽に駆け回る。

サイドハーフ(SH)

サイドハーフの役割と特徴

サイドハーフは主に「4-4-2」や「4-2-3-1」などのフォーメーションで、2列目のサイドにポジションを取る。攻守に多くのタスクが課される、運動量の求められるポジション。

攻撃面では、サイドに大きく開いて攻撃の幅を取り、相手守備ブロックを広げる役割を担う。サイドバックと連携してサイドを攻略し、深い位置まで侵入してFWへクロスを入れたり、中へ切り込んでシュートやラストパスを出す決定的な仕事を求められる。

一方守備でも、相手サイドバックにプレスをかけて低い位置に押し込んだり、ラインを突破された場合は、プレスバックして自陣の低い位置まで戻り、ボランチと連携してボールを奪い取ることも要求される。

プレースタイル

中盤を縦横無尽に走り続ける汗かき役。

攻撃も守備も同じぐらいの貢献が求められ、サイドだけでなく中央の崩しや守備にも参加しなければならないため、90分を通して走り続けられる豊富なスタミナが不可欠。

代表的な選手

蒼の豪傑、小野瀬 康介

2018シーズン途中にJ2レノファ山口より加入。抜群の攻撃センスを誇り、精度の高いミドルシュートで勝負を決めるゴールを量産。3バック時はウイングバックもこなすなど、運動量豊富で、献身的な守備でもチームに貢献。2022年までの5シーズン、ガンバの右サイドで躍動した。

ウイングバック(WB)

ウイングバックの役割と特徴

ウイングバックは「3-5-2」「3-2-4-1」「3-4-3」などの3バック固有のポジションで、中盤の両サイドに位置する。

4バックのサイドバックとポジションは似ているが、より攻撃の比重が高くなる。

攻撃時はウイング、中盤ではサイドハーフ、守備時はサイドバックと、サイドのタスクを1人でこなさなければならないため、超人的な走力とスタミナが必要とされる。

プレースタイル

サイドのスペシャリスト。

攻撃時はサイドライン一杯に大きく開き、高いポジションを取ることで、相手守備ブロックを広げ、味方の攻撃の幅を取る。

一方ウイングバックの裏は常に相手に狙われるスペースとなるため、ボールを奪われたらすぐに戻ってスペースを埋めなければならない。

試合を通してサイドの上下動を繰り返すことができる、スピードとスタミナを備えた選手が多い。

代表的な選手

疾風怒濤の青い風、藤春 廣輝

ガンバは伝統的に4バックがメインフォーメーションのため、左サイドバックが本職だが、その攻撃的なプレースタイルを生かして、3バック時は左ウイングバックとして、そのスピードとスタミナを存分に発揮。2011シーズンに加入以来、ガンバ一筋のワンクラブマン。2023シーズンもガンバの左サイドで躍動する。

ボランチ

ボランチの役割と特徴

ボランチは、「4-4-2」「4-2-3-1」「3-2-4-1」などのポジションで、中盤の底に位置する2枚の守備的MFを指す。

主な役割は、まず中央の守備。一番危険なスペースであるバイタルエリア(DFラインとMFラインの間のスペース)をケアし、そこに侵入してくる相手の攻撃を遮断する。

一方攻撃時は、ビルドアップの中心となり攻撃を組み立てる。的確なポジショニングで、DFラインからボールを引き出し、長短のパスを使い分け前線にボールを供給する。

カウンターで早く攻めるのか、中盤でボールを回してチームを落ち着かせるのか、ボランチのパスで攻撃のリズムを作り出す、まさにチームの心臓といえるポジション。

プレースタイル

一口にボランチといっても、チームの戦術や選手の特徴により、いくつかのプレースタイルがある。

ボックス トゥ ボックス

自陣のペナルティエリアから、敵陣のペナルティエリアまで、ピッチ全体を激しく上下動して、攻守に参加する、スタミナに優れたオールラウンダー。ボール奪取能力に優れた猟犬タイプ。

代表的な選手

ピッチの猟犬、井手口 陽介

フィジカルとスタミナに優れた中盤のダイナモ。ガンバアカデミー傑作の一人。2014年に飛び級でトップ昇格を果たすと2016年から主力に定着。能力の高さを見せつける圧巻の活躍で、2018シーズン途中に海外移籍。2019シーズン途中にガンバへ復帰するも、2022シーズンよりスコットランドのセルティックへ2度目の海外挑戦中。

プレーメーカー

低めのポジションでボール回しの中心となり、長短のパスを散らして攻撃を組み立てるレジスタ。パススキルが高く、ピッチ全体を見渡せる視野の広い選手が多い。

ダブルボランチの場合は、守備力の高い猟犬タイプやアンカータイプの選手と組ませることが一般的。

代表的な選手

マスター オブ ガンバ、遠藤 保仁

ガンバの誇る黄金の中盤の中心。長短のパスを自在に操り、ピッチを俯瞰する広い視野と優れた判断力で中盤を支配。圧倒的なポゼッションでゲームを支配する超攻撃サッカーの核として君臨し、ガンバに9つのタイトルをもたらした。在籍20シーズンは歴代最長。

アンカー

アンカーの役割と特徴

アンカーは、「4-1-2-3」などのポジションで中盤の底に位置する1枚の守備的MF。いわゆる1ボランチのフォーメーション。

ボランチよりはさらに守備に特化したポジションで、バイタルエリアの中央を閉める役割。

攻撃面ではビルドアップの起点となり、前線に楔のパスを入れる役割を担うが、ボランチのように前に上がることはなく、中盤の低い位置にとどまりバイタルエリアを空けないことが重要。

プレースタイル

危機察知能力に優れた、クラッシャー。

自陣のバイタルエリアをカバーし、相手の攻撃の芽をいち早く摘み取る。アンカーの両脇のスペースは、相手にとって狙いどころとなるため、相手の攻撃を予測し、味方と連携してスペースをカバーする危機察知能力が求められる。

代表的な選手

守護聖人、明神 智和

ガンバ黄金の中盤を底から支えた守備的MF。抜群の危機察知能力と無尽蔵のスタミナで、「いるべきところにいる」選手として、守備に安定をもたらした。2006シーズンに柏から加入すると、恩師/西野監督の下でACLを含め多くのタイトル獲得に貢献。在籍は10シーズンにわたり、ベテランとなっても貴重なバックアップメンバーとして、2014シーズンの国内3冠に貢献した。

まとめ

現代サッカーは進化のスピードが速く、次々と新しい戦術やフォーメーションが生み出され、「MF」の役割も、より広範囲に、かつ細分化されてきている。

かつては遠藤、二川、橋本、明神の「黄金の中盤」を誇り、超攻撃サッカーでJリーグを圧倒してきたガンバも、世代交代によるスタイルの変革に苦しみ、ポゼッションやビルドアップといった攻撃の組み立てができず苦しんでいる。

2023シーズンのガンバは、スペインの戦術家ポヤトスを新監督に招聘し、再びポゼッションサッカーへの挑戦を決めた。食野、山本悠樹、山本理仁、奥野といった若い世代のMFと、新たなポゼッションスタイルを構築できるか、長い目で見守っていきたい。

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