【ビルドアップの出口】偽サイドバックって何?

戦術

ポジショナルプレーは、実際の試合でどう活用されているのか。
代表的なプレー戦術をいくつか紹介していく。
まずは近年大流行し、今年のガンバでも半田がトライしている「偽サイドバック」。

偽サイドバックとは

「偽サイドバック」とは、一体どのような戦術だろうか。

ビルドアップの局面で、SBがアンダーラップ(中央に移動)して
ハーフスペース(ピッチの中央より)にポジションを取ること。

実際のフォーメーションで、動きを見てみる。
初期配置が「4-3-3」のフォーメーションで使われることが多い。

  1. まず、アンカーがDFラインに落ちる。(ボランチ落ち)
  2. 次に、両CBがワイドに開く。
  3. SBが押し出され、ボランチのスペースを埋める。

このように、SBがハーフスペースにポジションを取り
「3-6-1」に可変することで、パスコースの選択肢が多くなり
ビルドアップがしやすくなる
、という戦術的な狙いがある。

これは両SBがボランチに上がるパターンだが
片方のSBだけがボランチに上がり、DFラインは残り3枚がスライドするパターンもある。

ちなみに、このSBが内側に入っていく動きのことを
「内側」なので、ついついインナーラップと呼んでしまうが
オーバーラップの対義語なので、正しくはアンダーラップ。
(インナーラップだと、逆はアウターラップになってしまう。。)

偽サイドバックのメリット

偽サイドバックには、以下のメリットがある。

  1. 中央で数的優位を作れる。
  2. IH(インサイドハーフ)が高い位置を取れる。
  3. DFラインから、WGへのパスコースが空く。
  4. ネガトラ(ボールロスト)時に、中央の守備を固めやすい。

中盤での数的優位

最終ラインからのビルドアップ時に、2トップがプレスをかけて
アンカーとIHへのパスコースを切られても、SBが中盤に顔を出すことで
ビルドアップの出口になれる。

IHが攻撃に専念できる

SBがボランチの位置に上がることで、中盤をアンカーとSBでカバーできるため
IHがプレスバックする必要がなくなり、より高い位置で
攻撃的にふるまう
ことができる。

WGへのパスコース

SBが中に絞ってマーカーを引き連れ、逆にCBがワイドに開くことで
DFラインからWGへのパスコースが生まれ
DFラインから前線へ、一気にボールを運ぶことができる。

またWGは、斜めにボールを受けることができるので
前向きにボールが受けれる、というメリットもある。

中央が固くなる

ボールを失ったときに、中央の人数が多いため
アンカー脇のスペースを埋めることができ、中央から崩されにくくなる。

偽サイドバックのデメリット

メリットがあれば、当然デメリットもある。

  1. アウトサイドレーンが、がら空き
  2. SBに求められるタスクが高度化

アウトサイドレーンの空洞化

ボールを奪われたときに、SBが中に絞っているため
サイドに広大なスペースを空けてしまう。

中の守備が固いというメリットの裏返しなので、致し方ないところ。
サイドからの崩しは仕方ないと割り切って、中をしっかり固めるのが得策。

SBに高い能力が必要

従来のSBであれば、背後をサイドラインに守られているため
相手のプレスは、180°の範囲でしか掛かってこないが
偽SBはピッチに中央にポジショニングするため、360°全方向ケアする必要がある。

また求められるタスクも、上下動を繰り返すスピード,スタミナだけでなく
ビルドアップにも積極的に関与するため、高い技術と戦術理解力を要求される。

よってSBにも能力の高い選手がいないと、この戦術は機能しない。

まとめ

偽サイドバックとは、ポジショナルプレーにおいて、ビルドアップを
よりスムーズに行うための、一つの動き方。
SBがサイドラインに追い詰められて、プレスのハメどころになることが多いため
より中央ポジションを取って、ビルドアップの出口にしようという発想である。

ビルドアップを重視する、ポゼッション志向のチームと相性の良い戦術のため
今年のガンバも、半田の右サイドを中心に、積極的にトライしており
ビルドアップ面でも進化を見せている。

またWGがワイドに開きやすくなるため、1対1で勝負できるWGを多数擁する
今年のガンバには特に相性が良く、ポヤトス監督が積極的にトライしているのも頷ける。

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