【戦術解説】ポジション編 第3回「DF」「GK」

戦術

戦術解説のコーナー。今回で「ポジション」編はラスト。

第3回は「DF」「GK」。

DFの役割

ディフェンダー(DF)の役割は、自陣のゴールを守り相手に得点を与えないこと。点を取られなければ負けないので、まずは失点を0に抑えることを求められる。

背番号は、右サイドバックが2番、左サイドバックが3番、センターバックのうち、カバー役が4番、チャレンジ役が5番をつけることが多い。

DFは、役割ごとに次の2つのポジションに大別される。

  1. センターバック(CB)
  2. サイドバック(SB)

ではそれぞれのポジションの役割、プレースタイルについてみていく。

センターバック(CB)

センターバックの役割と特徴

センターバックの役割は、まず相手FWを抑えること。

そのためには、1vs1で負けないフィジカルとスピード、クロスやセットプレーで競り負けないヘディングの高さが必要。

さらに現代サッカーでは、センターバックもビルドアップの起点として、攻撃にも参加することが求められる。正確なロングフィードを送るためのキックの精度や、DFラインでボールをスムーズに回すための的確なポジショニングなどが必要になる。

プレースタイル

同じセンターバックでも、選手が得意とするプレースタイルにより、以下のタイプに分けられる。

ハードプレス

激しい当たりで攻撃の芽を摘む、ハードマーカー。

屈強なフィジカルで1vs1には絶対の強さを発揮し、危険なシーンでは体を張ってゴールを死守するDFラインの番人。

メンタルも強く、積極的なコーチングで味方を鼓舞する闘将タイプの選手が多い。DFラインに必ず1人はこのタイプが必要。

代表的な選手

熱き蒼の城壁、中澤 聡太

188㎝の長身を武器に、ガンバの黄金期を支えた熱血CB。空中戦の強さだけでなく、ビルドアップ能力にも長けており、西野監督からの信頼も厚かった。毎年のように強力なCBを補強されても、いつのまにかレギュラーを奪い返す努力家で、そのルックスと明るいキャラクターでファンも多かった。2007年の加入から、6シーズンにわたり活躍。

ビルドアップ

後方からの攻撃の組み立てを得意とする、現代型センターバック。

守備能力に加え、前線へのロングフィードなどパス能力も高い選手が多い。

2CBの場合は、ハードプレスタイプとビルドアップタイプのコンビが一般的。

代表的な選手

No.5の伝承者、三浦 弦太

正確なロングフィードを武器に、積極的に攻撃の組み立てにも参加するほか、3バックでも4バックでも中央でDFラインを統率できる万能型のセンターバック。2017年に清水より加入し、即レギュラーに定着、日本代表にも選ばれ、その能力の高さを見せつけた。在籍7年目となる2023シーズンも、後方からガンバを支える。

サイドバック(SB)

サイドバックの役割と特徴

サイドバックは4バックのDFラインで両端に位置するポジション。

主な役割はサイドの守備だが、攻撃面でもサイドハーフと連携して深い位置まで攻め上がりクロスを入れるなど、攻守にわたって運動量を求められるポジション。

一試合を通してサイドを繰り返し上下動するスタミナと、対面のサイドハーフを振り切るスピードを備えたドリブラーが多い。

プレースタイル

サイドバックは、大きく攻撃型のサイドバックと守備型のサイドバックに分かれる。

さらに最近は「偽サイドバック」という新たなプレースタイルも生み出されている。

攻撃的サイドバック

攻撃センスあふれる、サイドを切り裂くドリブラー。

サイドの上下動を厭わずオーバーラップを繰り返し、相手陣の深い位置まで侵入して攻撃に参加する。

スピードとドリブルのテクニックに優れ、前線の選手がコンバートされることも多い。

カウンターを受けた場合は、オーバーラップしたサイドバックの裏が狙い目となるため、全速力でプレスバックできるスタミナは必須。

代表的な選手

青き闘犬、安田 理大

驚異的なスタミナを誇る攻撃的左サイドバック。2006年にユースから昇格すると、2007シーズンには早くもレギュラーに定着。同年のナビスコカップで決勝点を挙げ、タイトル獲得に貢献。自身もニューヒーロー賞に輝いた。日本代表にも上り詰めた、調子乗り世代の代表格。在籍4シーズンで、オランダのフィテッセへとステップアップ。

守備的サイドバック

攻守のバランスを保つ、バランサー。

あまりオーバーラップせず、低い位置で守備のバランスを重視してプレーするサイドバック。

攻撃的なサイドバックを起用する場合、守備のバランスを保つため、逆サイドには守備的なサイドバックを起用することが一般的。

代表的な選手

蒼き情熱、オ ジェソク

両サイドを高いレベルでこなせるサイドバック。守備力に定評があり、1vs1の守備に絶対の自信を持つ。2013年に加入すると、2014シーズンには、藤春、米倉と熾烈なスタメン争いを展開、三冠に大きく貢献した。在籍8シーズンは、外国籍選手では最長。

偽サイドバック

「偽サイドバック」とは、ビルドアップ時にインナーラップして中央に入り、一列上がってアンカーの高さにポジションを取るサイドバックの動きのこと。

相手の前線からのプレッシングに対し、サイドバックがボールの奪われどころになってしまうため、ビルドアップをスムーズにする目的で考案された戦術。

「アンカー落ち」の動きで、両CBが大きく左右に開き、アンカーがその間に落ちて3バック化。

SBが押し出され、内側に動きながら、アンカーの位置に一列ポジションを上げる。

サイドバックが内側に入ることで、センターバック、アンカーと斜めの位置関係となり、ボールが引き出しやすくなる。またウイングともレーンの被りがなくなり、サイドハーフとも距離が近くなって、斜めのパスコースが多数発生し、ビルドアップがスムーズになる効果がある。

ゴールキーパー(GK)

ゴールキーパーの役割と特徴

ゴールを守る最後の砦。

ゴールを死守することはもちろんだが、コーチングもゴールキーパーの重要な役割。チーム全体の動きを見ながら、声でポジションを指示して、相手の攻撃をなるべくゴールから遠い位置で阻止する。

また現代サッカーでは、ビルドアップに積極的に参加することも求められるため、足元の技術も必要。

プレースタイル

攻撃的ゴールキーパー

ペナルティエリア外にも積極的に飛び出しDFラインの裏をカバーする、11人目のフィールドプレーヤー。

現代サッカーは中盤をコンパクトに保つため、DFラインを高くキープすることが多いが、その反面裏に広大なスペースを空けてしまう。そのため攻撃的ゴールキーパーは、あらかじめ前目のポジションを取り、裏を取られた際は積極的にエリア外に飛び出して、ピンチを未然に防ぐ。

足元の技術が高く、ビルドアップにも積極的に参加する選手が多いのも特徴。

代表的な選手

不倒の青い盾、東口 順昭

抜群の反射神経でスーパーセーブを連発するガンバの守護神。GKとしてサイズはそれほど恵まれていないものの、タイミングの良い飛び出しで相手FWとの間合いを詰め、シュートストップの山を築く。ハイボールの処理も安定しており、キャッチしてからの素早いスローイングでカウンターの起点にもなれる。2014年にジュニアユースまで過ごした古巣に帰還すると、いきなり国内三冠に大きく貢献。以降9シーズンにわたりガンバの正GKとして君臨。

守備的ゴールキーパー

ゴールエリアに鎮座する、不動のビッグセーバー。

不用意に飛び出さず、ペナルティエリア内にどっしり構えてシュートセーブするタイプのゴールキーパー。サイズと身体能力に恵まれた、大型のゴールキーパーにこのタイプの選手が多い。

代表的な選手

万博の守護神、藤ヶ谷 陽介

2005年に加入すると松代とのレギュラー争いを制して、いきなりJリーグ初制覇のタイトルを獲得。ガンバ黄金期の正GKとして、国内三大タイトルとACL、おまけにJ2のタイトルまで獲得したタイトルホルダー。キャリア終盤は不安定なプレーでスタメンを譲ることもあったが、西野監督にも「身体能力は外国人選手並み」と評された優れた運動能力で、ビッグセーブを連発した。

まとめ

一昔前のDFやGKといえば、大柄な選手がゴール前で壁を作ってとにかく守る、という風潮だったが、現代サッカーではビルドアップの起点として、DFやGKも攻撃に参加することが求められてきている。

よって以前のようにフィジカルに優れているだけではなく、高いパス能力や、的確な状況判断力がなければ、安定したポゼッションをすることが難しくなっている。

近年ガンバは残留争いに巻き込まれ続けているため、どうしてもゴール前を固める専守防衛のチームスタイルになってしまっている。2023シーズンはポヤトス新監督の目指すポゼッションサッカーに回帰できるか、長い目で見守りたい。

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