【一発で裏返し】疑似カウンターって何?

戦術

オフシーズンの戦術解説回。
今回は、強力WG擁する今季のガンバでも、しばしば炸裂した
「疑似カウンター」について解説。

疑似カウンターとは

定義

「疑似カウンター」とは、意図的に相手を自陣に引き込んで
背後に広大なスペースを作り出し、縦に速い攻撃を繰り出す戦術のこと。

この「意図的に」相手を自陣に引きずり込む、という点がポイント。

方法

「疑似カウンター」は、意図的にカウンターの状況を作り出すため
まずは、相手のハイプレスを誘発するところからスタートする。

①相手FWがプレスをかけてくるまで、GKとDFラインで、延々とボールを回す。

②ボランチは、わざとDFラインに近づき、相手FWに近いポジションを取る。
 →相手ボランチを、前に引き出したい!

相手ボランチが食い付いてくると、ボランチとDFライン間にスペースができる。
 →CFW、トップ下に、ボールが出せる。
相手ボランチが食い付いてこなければ、そのままボランチにボールが出せる。

③FWは、ボールを受けに下りて、相手CBを引きずり出す。
④WGは高い位置を取り、相手SBをピン止めする。

CBは引きずり出されるが、SBをピン止めすることで
相手DFラインが、ガタガタになり、ラインコントロールが難しくなる。

DFラインを制御不能にしたところで、背後のスペースを一気に攻略する。
両WGがSBとのスピード勝負で、裏抜け。
FWとトップ下が、レイオフ、ターンで、裏抜け。

メリット

  • ハイプレス対策
  • ビルドアップの省略

疑似カウンターの最大の目的は、最近のトレンドである「ハイプレス」対策にある。
前から人数をかけプレッシングを行い、敵陣でボールを奪って
手数をかけずにゴールまで迫る、「ハイプレス」戦術は
現代サッカーの基本戦術といってもいいほど、どのチームも採用している。
「疑似カウンター」は、このハイプレスを逆手にとって
一気に攻守をひっくり返す、有効な対抗策といえる。

また相手の背後を取ると、一気にゴール前までなだれ込む、縦に速い攻撃となるため
中盤のビルドアップが不要となる。
そのため、中盤に技術の高い選手を揃える必要が無いため
比較的予算規模の少ない、下位のチームでも取り入れやすい戦術といえる。

デメリット

  • 自陣でのボールロストによる、被カウンター
  • 足元の技術があるGK、CBが不可欠
  • 受け身の戦術

最大のデメリットは、自陣でのボールロスト。
GKとDFラインでボールを回すため、ここで横パスを相手に引っ掛けられると
失点に直結する大ピンチとなる。

よって、中盤に技術の高い選手は必要とされないが
GKとCBには、足元の技術が必要不可欠となる。
ただ、そのような選手は争奪戦となるため、どのチームでも採用できる戦術ではない。

また「疑似カウンター」は、相手がハイプレスに来ないと、始まらない。
アクションではなく、リアクションの戦術であるため
ボールを持たされることで、あっさり対策されてしまう。

実際の運用

採用条件

「疑似カウンター」は、以下のようなチームに向いている。

  1. 足元のあるGKがいる。
  2. ポジショナルプレーができるチーム。
  3. 1対1で勝負できるWGがいる。
  4. CFWがいない、ゼロトップ型のチーム。

1は必要最低条件。
さらに、DFラインとボランチで、パス交換の頻度が多くなるため
ピッチ全体に、バランス良くポジションを取り、パスコースを作り出せる
ポジショナルプレーができるチームであることが、望ましい。

そして、一旦攻撃に転じた後は
手数をかけずにゴールに迫るため、1対1に絶対の自信を持つWGがいると効果的。

またワントップ型のCFWよりは、前線で流動的に動き回るゼロトップ型の方が
スペースを作ったり、使ったりがスムーズになるため、戦術的な相性は良い。

具体例

「疑似カウンター」を採用するチームといえば
片野坂監督の大分トリニータと、デゼルビのブライトンが有名。

片野坂の大分は、高木という足元のある絶対的なGKを擁し
「3-4-2-1」から繰り出す「疑似カウンター」で、強豪チームを次々と沈め
J1で旋風を巻き起こした。
ただ、その後就任したガンバでは、当時の選手層が全く戦術にあっておらず
早々に採用を諦め、何の特徴も出せないまま、途中解任となってしまった。

海外で言えば、デゼルビのブライトン。
中盤のクオリティを必要としない、戦術的特徴をうまく生かして
三苫という絶対的なWGを武器に、強豪ひしめくプレミアでも
上位争いを続けている。

まとめ

2024シーズン、快進撃を見せたポヤトスガンバでも
「疑似カウンター」は、実はかなり活用されていた。

足元の技術がある一森の復帰、
対角に正確なフィードが蹴れる福岡の成長、
1対1で勝負できるウェルトンと山下の両WGの加入、
宇佐美、坂本、山田が流動的に入れ替わるゼロトップと
戦術を完遂できる選手層が、揃っていたことが大きい。

さらにガンバは、中盤の技術も高く、ボール保持を志向するチームであり
「疑似カウンター」を主戦術でなく、あくまでハイプレス対策の一つとして
うまく活用できていた。

2025シーズンも、大きく選手構成は変わらないため、発動する機会も多くあるはず。
こういった点にも注目して、観戦を楽しみたい。

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